高齢化の進展により、社会保障関係費が増大

財務省の財政制度等審議会は、2018年11月20日に2019年度予算編成等に関する建議をまとめ、麻生財務大臣に提出した。急速な高齢化を背景として社会保障関係費は、大きく増加しており2018年度予算においては、歳出全体の3分の1、一般歳出の6割を占めるに至っている。

わが国の社会保障制度は、社会保険方式を採りながら、高齢者医療・介護給付費の5割を公費で賄うなど、公費負担(税財源で賄われる負担)に相当程度依存している。

社会保障給付費の推移

出典元:内閣府
高齢社会白書 > 平成30年版高齢社会白書(全体版) > 6 高齢化の社会保障給付費に対する影響

経済・財政再生計画である「骨太2018」では、社会保障関係費の伸びを「高齢化による増加分に相当する水準におさめる」という方針から財政健全化を推進しているが、2022年以降については、団塊世代が75歳に入り始め、社会保障関係費が急増することを踏まえ、こうした高齢化要因を反映するとともに、人口減少要因、経済・物価動向、社会保障を取り巻く状況等を総合的に勘案して検討するとしている。

平成2(1990)年度と平成30(2018)年度における国の一般会計歳出・歳入の比較

出典元:財務省
平成31年度予算の編成等に関する建議(平成30年11月20日)

財政制度等審議会は、日本の国の予算、決算および会計の制度に関する重要な事項について調査審議するため、財務省の付属機関として設けられた諮問機関。学界、財界、学識経験者からなる組織で、基本的な財政制度や各年度の予算のあり方などについて重要な勧告や提言を行っている。

 

財政面からも介護分野へ改善提案

介護分野においても様々な提言がされているが、基本的には、「高齢化」「支え手の減少」「高度化」の観点から、「給付と負担のバランス」が重要視された提言となっている。

主な提言は以下の通りである。

  • 低所得の後期高齢者の保険料(均等割)に係る軽減特例の廃止
  • 軽度者に対する生活援助サービスやその他の給付について、地域支援事業 への移行
  • 居宅介護支援におけるケアマネジメントに利用者負担を設け、利用者、ケア マネージャー、保険者が一体となって質の高いケアマネジメントを実現する。 (ケアプラン作成の有料化)
  • 多床室の室料相当額についても基本サービス費から除外する。
  • 75歳以上の後期高齢者の自己負担について2割に引き上げる。

 

ケアプランとは

ケアプランは、在宅介護・施設介護の両方に存在する。その名前の通り、介護される人がどのようなケアを受けていくか考えられたプランで、要介護1から 5の方であれば、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが作成し、要支援1・2 の方であれば地域包括支援センター(介護予防支援事業所)の保健師などが、 作成するもの。

介護サービスを利用する前に、利用者の心身の状態や家族の状況に応じて、自立した生活を送るための介護サービス(要支援の方は介護予防サービス)を計画的に利用できるように、ケアプランを作成する。

これまで居宅介護支援事業所や地域包括支援センターのケアプラン作成にかかる費用は、全額保険で負担しており、利用者の負担はなかった。ケアプラン自体は自分で作成すること出来るが、作成費用がかからないということで、多くの人がケアマネジャーに依頼していた。

受給者一人当たり介護サービス費用

出典元:財務省
平成31年度予算の編成等に関する建議(平成30年11月20日)

ケアプランの作成費用は平均で月々14,000円程度なので、1割負担で1,400円、2割で2,800円となってしまう。有料になるので、重要となってくるのがケアマネジャー選びになる。

全て会って決めるわけにはいかないが、相性等の人柄や評判などを参考にすると良いとされている。加えて、担当人数も重要で30人以上の担当となると忙しすぎて、あまりしっかりケアしてもらえない可能性がある。

ケアマネジメントの質の向上に向けたイメージ

出典元:財務省
平成31年度予算の編成等に関する建議(平成30年11月20日)

利用者負担の背景には、利用者側からケアマネジャーの業務の質へのチェックが働きにくい状態であったことも問題であった。利用者自身が自己負担を通じてケアプランに関心を持ち、世代間の公平にも資する利用者負担は、目指すべき質の高いケアマネジメントの実現にもつながると考えられている。

 

給付と負担のバランス

後期高齢者

「給付と負担のバランス」とは、高齢化や支え手減少の中で公平な負担としていくという考えで、団塊の世代が後期高齢者となり始める2022年度までに、世代間の公平の観点も踏まえ、年齢でなく能力に応じた負担(軽減特例の廃止や自己負担の2割引き上げ)へ改革すべきというものである。

特に、後期高齢者の窓口負担は、現役世代の3割に対して、1割と大きく軽減されている一方、後期高齢者の人口は毎年増加していく。そのため、出来る限り速やかに75歳以上の後期高齢者の自己負担について2割に引き上げていくべきである。

さらに、高齢者は現役世代と比べて、平均的に所得水準は低い一方で、貯蓄現在高は高く、所得の低い高齢者の中にも、相当の金融資産を保有しているケースもあるとして、金融資産等を考慮に入れた負担を求める仕組みも検討されている。

 

2019年4月1日掲載